やりたいことに躊躇せずに飛び込んでいく
奥飛騨の山々に囲まれた飛騨古川。戦国時代に城下町として栄え、当時の街並みが残る一角は歴史を感じさせます。
また、毎年4月に行われる気多若宮神社の例祭「古川祭り」は、国の重要無形民俗文化財に指定されていて、地域にとっても大切なお祭りです。
「御神輿行列」や、数百人の男たちが太鼓を載せたやぐらを担ぎ街並みを練り歩く勇壮な「起し太鼓」、漆や彫刻、木彫装飾、からくり人形などで彩られ地域ごとに曳行される「屋台」など見どころも多く、多くの人が飛騨古川を訪れます。
岡崎賢一郎さんは、そんな飛騨古川の中心街から離れた山あいの場所、岐阜県飛騨市河合町で「ハラペーニョソース」を作っています。
岡崎さんの拠点は河合町にある「“kawaii”飛騨かわいスキー場」。
冬は6つのゲレンデがあるスキー場の整備や圧雪、ヒュッテの運営を行い、グリーンシーズンは同じ場所で「NOASOBIキャンプ場」を運営し、妻の美春さんと一緒にカフェとショップを営んでいます。
河合町で生まれた岡崎さんの人生は、なかなかユニークです。
高校卒業後、就職、結婚。その後、フィジー、ニュージーランドに移住。帰国後、ホスピタルクラウン(※)の第一人者と出会いクラウンの勉強のために再び海外へ。2020年にはクラウンの活動をしながら、スキー場とキャンプ場の仕事をスタートさせました。
そのほかにも、フラダンスの講師、五平餅屋など、さまざまなことに取り組んでいます。一見、脈絡がないようにも思えますが、岡崎さんがこれまで生きてきた中で人と出会い、「(自分が)やらなくては」という直感を信じて、挑戦した結果が今につながっています。
(※)病院の子どもたちや家族に、道化師(クラウン)として「笑い」と心のケアを届ける活動
自分が食べたいから作るというシンプルな思考
キャンプ場のカフェには、岡崎さんが手がけた食品や雑貨が並ぶ一角があり、その中に「ハラペーニョソース」があります。美春さんがレシピを開発し、2024年から販売しています。
「僕、そんなに辛さに強いわけではないのですが、辛いものは好きなんです。食べたい。ホットドックや南米料理に添えてあるハラペーニョがおいしいなと思っていて、自分で作れないかと考えたのがきっかけですね」
そこでまず始めたのがハラペーニョの栽培でした。自宅の側の小さな畑で、無農薬で除草剤を使わず、土もあまり耕さない自然農に近いやり方で、ナスやパプリカ、トマト、沖縄の島唐辛子などを自家用に作っていた岡崎さん。その経験もあり、「ハラペーニョも作れるでしょう」とスタートさせました。
取材にうかがった10月下旬、「ほぼ、収穫期が終わっているので、あまり残っていないかもしれません」と言いながら案内してくれた畑には、島唐辛子やタイカレー用の唐辛子と並んで、ハラペーニョが、まだ大きく艶やかな濃いグリーンの実をつけていました。
「ちょっとかじってみてください。どうですか? 最初、ピーマンのような苦味や青くささがきて、その後から辛さがきます。
ハラペーニョの辛さは後を引くんですよ」と岡崎さんはうれしそうです。
米麹を使い、味わい深いソースに
ハラペーニョ、リンゴ酢、米麹、ニンニク、塩。岡崎さんのハラペーニョソースの材料はシンプルですが、それぞれにこだわりがあります。特に特徴的なのは、米麹を使っていること。美春さんのアイデアで、使っているのは、飛騨市に移住し、無農薬栽培で米づくりを行っているサノライスの米麹です。ニンニクも飛騨産。お酢は、まろやかな酸味で素材の味を邪魔せず、バランスよく整えてくれるリンゴ酢を使用しました。出来上がったソースは、旨みが強く、程よい辛味が感じられます。
「なんにでもあうと思います」と岡崎さん。トマトや玉ねぎを刻んで混ぜればサルサソースになりますし、肉にも魚にもあうのでBBQソースとしてもぴったりです。パスタや唐揚げ、餃子、冷しゃぶなどにもあうそうです。
これまでキャンプ場と自社のWebショップでしか販売していませんでしたが、「味には自信がありますし、リピーターも多いのでもっと広く販売できないか」と岡崎さんは考えていました。そんな時に『目利き市場』の池田健一が販売を持ちかけました。
池田は、岡崎さんとの出会いを次のように振り返ります。
「2024年頃、飛騨市の地域おこし協力隊の方と知り合い、和紙や酒、岩魚、和牛など地域のいいものを教えていただきました。そのなかにあったのが岡崎さんが作る『ハラペーニョソース』です。なによりソースが抜群においしく、全国の方に食べてもらいたいと思いました」
『目利き市場』とのコラボレーションにあたり、商品名とボトルデザインを変更。さらに、食感を感じられる従来品の「粗ごし」タイプに加え、どんな料理にも合わせやすい「さらさら」タイプの商品も新たに開発しました。
「『HIDA HEAT(ヒダヒート)』という名前はすごくいい! と思いました」と岡崎さん。
『目利き市場』が考えたボトルのデザインには、古川祭りの衣装でも使われる飛騨染の鳳凰の羽の柄と色を使っています。カラフルな色は、ハラペーニョの原産地であるメキシコもイメージさせるように設計し、「飛騨で作るハラペーニョ」という意味が伝わってくる名前とデザインになりました。
飛騨から全国へ
今回『目利き市場』で販売するのは、限定100セット。「粗ごし」と「さらさら」の2本セットです。
「僕が大切にしているのは『自分の好き』です。ハラペーニョも、自分が食べたいから作ったようなもの(笑)。でも、自分一人でできることは限られています。僕の好きなことを実現するために、地域の方々の力を借り、今回の池田さんのように外の力も借りて、人と人のつながりが生まれました。僕の好きが、みんなの好きになればいいと思っています」
「好き」というシンプルな思いが詰まった「HIDA HEAT」を『目利き市場』が全国にお届けします。
